化粧箱を製造するということは、非常に多様な仕様の中から
もっともその商品に合った加工方法を選択して作るということになります。
理想を言えば作業性や美粧性、あるいはその商品の特性に
十分に対応できる加工を施した箱を作ることになりますが、
昨今の経済状況を鑑みれば潤沢な予算や納期はあまり期待できないことでしょう。
であるならばその限られた予算や納期の幅の中から、
どれだけ作業性や美粧性などを妥協するかが
箱の製造における一つの指針となるといえます。
もちろんどうしても妥協できない部分があれば
もしくは気に入るものがあれば、
例え予算を超えてでもという話になることもあるでしょう。
実際私も、つい先日あまり予算がかけられないから安い仕様で!という依頼から
表面加工をニスという安価にかけられるものにした見積もりを作り、
いざ校正を提出したところ、やっぱりもっと高級感が欲しいとの話になり、
であるならばと余っていた校正紙にプレスコートという
光沢感をもたせる表面加工を施して見積もりと一緒に提出すると、
これだ!と大層気に入られ、当初予算を超えての決定となりました。
とはいえ毎回こんな話にもなりません。
そこで今回は箱の製造における各工程で、
それぞれどうすれば高くなるけど品質は上がるのか、
あるいはどうすれば安くなるけど妥協が必要になるのかを、
浅く広く紹介していきます。
予算とのせめぎ合いのご参考にして下されば幸いです。
化粧箱の製造における印刷での加工方法
まず化粧箱の製造過程のもっともはじめにあたる印刷を紹介します。
印刷において価格の決定要因となるものは【色数】です。
使用する色数が増えれば単価は高くなりますし少なくなれば安くなります。
また同じ1色でもベタの場合は2色分程度の単価になりますし、
これは金や銀のインキでも同じことが言えます。
他にも耐光インキなどもありますが、ここまでいくと手を広げすぎなので割愛します。
特別な耐性をもつ高いインキもあると頭の片隅に覚えて頂ければ十分です。
その中で今回紹介したいのは【特色】です。
ここでいう特色とは、ある色を出すために練られたインキとその色を指します。
これは通常使用するCMYKの4色では表現が難しかったり、
会社ロゴなど色のブレをなるだけ抑えたいもののために使用します。
また、デザインの色構成が1色や2色だけとかでも使用します。
もちろんこの特色も、1色分の計算になりますので
増やせばそれだけ高くなりますし減らせばそれだけ安くなります。
何が言いたいかと申しますと、例えばデザインの中でどうしてもこだわる色があるならば
CMYKの掛け合わせと、そのこだわり部分のみ特色使用の5色印刷をお勧めします。
こうすれば特色を使用する分、単価はあがりますがその部分の安定性はずっと増します。
逆にデザイン全体の色数を減らして例えば緑とピンクの2色だけにまとめれば、
印刷は特色2色だけとなりますので単価が抑えられるということにもなります。
こだわりの色を求めて品質を向上させるための特色。
あるいは単価を抑えるためにデザインを妥協しての特色。
どちらにも有効的に働きます。
化粧箱の製造における表面加工での加工方法
ここでは印刷の次工程になる表面加工での化粧箱の製造における加工方法を紹介します。
ここはとても単純です。
光沢を強くしたいのなら、
【強い】 PPラミネート>プレスコート>ビニール>ニス 【弱い】
PPとプレスはフィルム系と溶剤系の違いがあり、
そのため光沢の感じは違いますがどちらも非常に高い光沢が出ます。
価格を優先されるならば
【安い】 ニス>ビニール>プレスコート>PPラミネート 【高い】
実はニスとビニールは通し枚数次第ではそう変わらないどころか
ビニールの方が安くなることまでありますが、基本的にはニスの方が安価です。
また艶を消す(マット感を出す)場合でも、
【強い】 マットPP>マットビニール>マットニス 【弱い】
価格優先ならば、
【安い】 マットニス>マットビニール>マットPP 【高い】
です。プレスコートは艶消しがありません。
実際見てみないと選びにくいでしょうから何か見本を持ってきてもらうか、
冒頭のお客様のように校正を上げる際に別の種類の表面加工もやってみるなどで
もっとも希望に沿う加工を選択していただければ良いかと。
品質を求められるのか、コストを優先されるのか、
妥協点としてプレスコート、コスト最優先でニス、辺りが多い印象ですね。
化粧箱の製造における貼り形状の差
化粧箱の製造において最終工程となる貼りの紹介です。
今回はこの中でも比較が簡単なサック箱、地獄底箱、横底貼箱を紹介します。
サック箱、地獄底箱は貼りの種類としてはサイド貼りという形式になり、
実際の箱なり当社HPの形状別商品一覧を見ていただければわかりやすいのですが、
糊貼りが箱の側面のみで貼り加工賃としては安価なものとなります。
そのうえで、サック箱は天面底面どちらも差込式の蓋となっており
充填作業が容易に行えますが、あまり重たいものは入れれませんし
テープで補強されていることも多いです。
一方地獄底箱は底面の組み立てが少し手間ですが
その分サック箱よりも重たいものでも対応ができます。
地獄底箱の形状など、もっと詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
そして横底貼箱は側面に加えて底面も糊貼りを行う加工になります。
底面がすでに組まれているような状態であることから
充填作業が非常に容易であり、また貼っていることから重たいものにも対応できます。
しかし貼り箇所がサイド貼りよりも多いことから加工賃が高くなります。
まとめると、
作業性
【簡単】 横底貼箱>サック箱>地獄底箱 【手間】
底面の強度
【強い】 横底貼箱>地獄底箱>サック箱 【弱い】
コスト
【高い】 横底貼箱>地獄底箱=サック箱 【安い】
こんなところです。
言うまでもありませんが予算が十分であれば横底貼箱がおすすめです。
厳しいのあれば作業性と底面の強度=商品の重量との兼ね合いになるでしょう。
パッケージの表面加工にもこだわりたい方は以下の記事もご覧ください。
最後に…
上にあげたように箱の製造においては、
コストとのせめぎ合いの中でどれだけ品質や作業性に妥協できるかで
その加工内容を決定していくこととなります。
ここで重要になるものは、
ご依頼主であるあなたが何を重要視するかということです。
我々は加工方法を紹介することは出来ます。
それがどんな利点があり、どんな欠点があり、
他にどんな方法があるのかを掲示することもできます。
しかしもっとも重要な、どこを重要視するのかという点は
我々には教えていただかなければわかりません。
ですのでお打ち合わせさせていただくにあたり
そのことをよく教えていただきたいのです。
例えば医師の診断のことを考えてみてください。
彼らが問診において最初にすることは間違いなく患者の気分を尋ねることでしょう。
それは自分の気分を一番よく知っているのは患者に他ならないからです。
しかし医師が治療方法を患者に尋ねることはそれほど多くないでしょう。
なぜなら問題の解決策は医師の方が詳しいからです。
尋ねることがあるとすればそれは、
こんな方法とあんな方法があるけどどちらにしますか?
そういった話になるはずです。
大げさな話で失礼いたしました。
しかし製造する箱に対してどんなことを悩んでおられるのかを
一番良く知っているのはやはりあなたに他なりません。
ですのでどこを優先し、どこを妥協するのかをよく考えていただきたいのです。
もちろん我々も、あなたが何に悩んでおられるのかを聞き出せるよう努力いたします。