お客様に手に取っていただくために商品の情報と魅力を余すことなくお伝えする。
このことが非常に重大な役割であることは言うまでもないこと。
そのためにはどんな情報を記入し、どんな絵柄にするのかを考えなければいけません。それ次第で商品の価値すら大きく変動することも考えられます。 『商品の価値UP』という意味においては、キャラクターとのコラボ商品などはその極地ではないでしょうか?
かように印刷とは重要なもの。 もっともデザインに対する提案は完全に個別案件になりますのでここではいたしません。印刷加工の側から箱の作成手段を考えるときに、どのような加工手段を選択できるのかと、そのことによる利点や欠点をオフセット印刷の原理なども交えつつ紹介していきたいと思います。
箱の作成に用いられるオフセット印刷とは?
オフセット印刷
オフセット印刷とは平版印刷の一種であり、アルミ版を用いて原紙にインキを転写する印刷方式であります。
画像を焼き付けたアルミの版を印刷機のローラーにセット。
インキも同じく印刷機上部にあるローラーにセット。
これを全ての色数分だけ行います。
そしていざ印刷となりますとセットされたアルミ版が回転し、まず水が供給されるエリアを通過します。
この際に画像が焼き付けられた部分以外に水が付着します。(非常に細かな突起がついており、それによって水が引っ付きます)
続いてインキの供給エリアへと回転していきますが、水と油ははじきあうという性質のため油であるインキは既に水が付着してある部分には着かず、画像部分のみに付着します。
インキが付着したアルミ版はブランケットと呼ばれるゴムのローラーと接し、その際に版に付着していたインキがブランケットへと転写。
そうしてブランケットが印刷機内部を通ってきた原紙と接し、アルミ版から転写されたインキを今度は原紙へと転写しインキを原紙まで届けます。
直接固い紙と接さずに、ブランケットという柔らかいゴムのローラーを介することでアルミ版の摩耗を抑えられます。
そのため品質を落とすことなく一度に大量の印刷が可能であり、そのための過程であるアルミ版からブランケット、ブランケットから原紙へとインキが剥がれては付着していくことからオフセット=off(剥がす)set(着ける)印刷と呼ばれます。
このようにして印刷がなされていくため、印刷工賃において色数というものは非常に大きな要素となります。
1色ごとにこれらの工程が行われるので例え使用量が少ない色でも版をセットし、インキを塗布し、管理し、作業が終えれば洗浄しなければならないため、使用量の多い色と変わらない単価の計算テーブルが採用されます。
油性インキとUVインキの違い
オフセット印刷では2種類のインキのどちらを使うかを選択することができます。
それが油性インキとUVインキです。
この2種類のインキは何が違うのかと言いますと、乾燥までに必要とする時間、になります。
油性インキは一般的なインキでありますので、乾燥にかかる時間も基本的半日~2日。
冬場など気象条件によってはもっと長い時間が必要となることもあります。
対してUVインキは印刷された時点で乾燥が完了します。
そのためインキの乾燥を待つ必要がありません。
何故即座に乾燥するのかと言うと、UVインキには紫外線を浴びることによって即座に硬化する性質を持たせているためです。
その性質を活かすためにUV印刷に対応している印刷機には印刷された紙が排出口へと至る前に紫外線を浴びせる装置が備えられております。
そこで紫外線を浴びるため、排出されるころには硬化し、乾燥が完了。あとは次の工程へと移るのみとなるのです。
UVインキのメリット・デメリット
UVインキのメリット ①納期対応
乾燥が一瞬で済まされるという点は、箱の作成において実に様々な利点を生み出します。
1つは先ほどちらっと書きましたが次の工程への受け渡し時間の差です。
油性インキであれば印刷が終わってからインキの乾燥を待たなければ次の工程へと移すことは出来ません。
未乾燥のまま下手に動かしたり圧を加えればどのようなことになるのかは説明するまでも無いこと。
その点UVインキであれば印刷を終えたときには硬化し乾燥し終えているため、極端なことを言えば印刷を終えた次の瞬間にトムソンによる打ち抜き作業に入ることすら可能なのです。
そのため箱の作成において、納期の無い仕事であればあるほど、UVインキを選択されることがメリットになるでしょう。
UVインキのメリット ②不良発生の防止
乾燥が早いと何故次の工程へと即座に移すことができるのか?
それは積み重なっている上下の紙にインキが移ったり擦れたりしないため。
これはそのまま不良発生に対する予防にも繋がります。
印刷での不良と言えば、色のムラ、見本との色の差、埃などが版やブランケットについていたことにより発生するピンホール(白抜け)現象、水の汚れによるインキの飛び散り、などなど数多くの現象がありますが、インキの未乾燥を原因とする上下の紙へのインキ擦れ・移り、所謂ブロッキングだとか裏移りとか言うものも、不良原因としてメジャーなものです。
この現象を防ぐために油性インキを使った印刷であればスプレーパウダーという非常に細かな粉を、印刷を終えて排出される直前の紙の上に散布します。
これにより紙と紙の間に空間が生み出され、裏移りを防ぐとともに空気の通りを良くして乾燥を促します。
しかしこの粒の散布量が多すぎれば紙面を過剰に汚すことに繋がりますし、少なければもちろん不良につながります。
このようなリスクを軽減できることもUVインキを使用するメリットと言えるでしょう。
またこちらは加工側の視点にはなりますが、UVインキを使用し、スプレーパウダーを撒く必要性を無くすということは、印刷機はもちろん印刷機の近くや、印刷作業者へのパウダーの飛散も防ぐことができ、作業環境に対するメリットにもなります。
さらにパウダーだけでは裏移り防止として十分では無い場合もあり、そのときには板取という作業(紙と紙の間に空間を作るために木の板を一定間隔で挟み、紙にかかる圧を減らす作業)も必要となるのですが。。。これももちろんUVインキであれば不要となります。
このようにUVインキは不良の防止や作業効率化においても大いに利点のあるインキと言えます。
UVインキのメリット ③印刷適正
乾燥が早いことによるメリットの3つ目として、ここでは印刷適正を上げさせていただきます。
印刷適正とは基本的に、平滑性が高くて、紙の表面の層に付着したインキが内部に滲み込みすぎないものの方が高いと言われます。
そのため印刷においてはこのように表面の層に印刷適正を高めるための処理を施した紙を使用すると余計なトラブル無く加工ができるのですが、そこは多様化の現代。
あえて和っぽい雰囲気を感じる表面が画用紙のようにごわついている紙であったり、あるいはアルミを蒸着させたキラキラの紙を使いたいといった需要もあることでしょう。
油性のインキではこういった紙では上手く浸透せず乾燥不良を起こしたり逆に浸透しすぎたりで印刷が難しいものが多くありますが、ここでもUVインキの乾燥の速さが光ります。
紫外線を浴びせてしまえば即座に硬化してしまうため、浸透しづらい紙でも印刷できますし、浸透しすぎて問題になることもありません。
そのためUVインキであれば多種多様な紙に対して印刷することができるのです。
UVインキのデメリット ① 一瞬での硬化は欠点にも?
乾燥が早いことは多くのメリットを与えますが、デメリットになることもあります。
UVインキは油性インキと比べて光沢が弱いと言われがちです。
なぜなら一瞬で硬化するから。
一瞬で硬化すると何故光沢が弱くなるのでしょう?
それは粘土や、あるいはホットケーキのように粘性のあるものを落としたときのことを想像していただければわかるかも知れません。
べちゃっと落ちたそれは、徐々に、均等に、円形に広がりながら平らになっていくでしょう。
インキでも同じことが起こるのです。
ブランケットから原紙に転写されたインキは乾燥していく中で時間をかけてなだらかになっていきます。
光沢感というものは、鏡のようなものであればあるほど強まります。
つまり表面の平滑性が高ければ高いほど、光の弾く角度が揃うため、それが強い光沢感となるのです。
このように乾燥の過程で紙に浸透していき綺麗な光沢感を生み出すようになることを紙に馴染んでいくだとか、少し洒落た言い方をするとレベリングしていくと言ったりします。
しかしUVインキはどうでしょうか?
散々申し上げているように一瞬で硬化してしまいます。
上の例でいえばフライパンに落としたホットケーキがそのままの形状で焼きあがってしまうようなものです。どうしても凸凹歪な形状になりがちです。
そのため光沢感においてはUVインキは油性インキよりも劣ると言われております。
UVインキのデメリット ② 他にも
油性インキに比べたときのUVインキのデメリットとしてあと数点。
まずは単純明快に価格差があります。
ここまで説明した通りUVインキにはその一瞬で硬化するという性質から様々なメリットがありますが、しかしてその分インキそのものが高く、また紫外線照射を行うランプなど周辺資材もまた高くなっております。
そのため油性インキでの見積もりとUVインキでの見積もりはその単価に差が生まれます。
またこれは詳しくは後述するのですが、表面加工という、インキの上に溶剤などを塗布し印刷面を保護したり光沢感を与えるなど付加価値を追加するのに一役買う工程があるのですが、そのうちの印刷と同時に行えるマットニスというものあります。
その名の通りマット感を表現できる加工なのですが、UVインキではそのマット感が非常に弱くでしか表現されません。
また黒色の硬化は他の色よりも遅く、そのため黒ベタなどではブロッキングなどに警戒が必要です。
こちらはUVランプから照射された紫外線を黒色を生み出すために使われているカーボンが吸収してしまうために発生します。
素材の仕様上どうしようも無い部分であり、UVインキの覆しがたい弱みと言えるでしょう。
このようにUVインキは決して油性インキの上位互換というわけではありません。
それぞれの特性を理解し、使い分けることが重要です。
とはいえ基本的にはUVインキの方が目に見えたメリットが多く、おススメされるものではあります。