
「『版』という言葉には複数の意味がある?」
「箱の製作時に『版』という言葉が出てきすぎて混乱している」
「平版・凸版・凹版の違いを知りたい」
このように悩んでいる方も多いでしょう。
印刷において、様々な版がでてくるため、ひと言で説明するのが難しい言葉です。
当記事では、辞書的な『版』の意味から製版・刷版・平版・凸版・凹版といった印刷関連の言葉を詳しく解説しています。
パッケージ製作の打ち合わせの前に、ぜひご一読ください。
印刷の「版」に関連する用語の違い(製版・刷版・版下)

印刷について調べていると、「版」以外にも「製版」「刷版」「版下」といった似たような言葉が出てきて混乱することがあります。まずは、これらの用語の違いと、印刷工程における位置づけを整理しましょう。
| 用語 | 意味・定義 | 印刷工程での位置づけ | 化粧箱印刷との関係 |
|---|---|---|---|
| 版下(はんした) | 印刷用の版を作るための「元となる原稿」や「デザインデータ」のこと。 | デザイン完成時 | お客様から入稿されるIllustratorなどのデータが現代の版下にあたります。 |
| 製版(せいはん) | 版下(データ)をもとに、印刷機にセットするための「版」を作る作業工程のこと。 | 印刷の直前(プリプレス) | CMYKの4色にデータを分解し、それぞれの版を作成する工程です。 |
| 刷版(さっぱん) | 製版工程で作られた、実際に印刷機にセットする版そのもの(物体)のこと。 | 印刷時(プレス) | 化粧箱のオフセット印刷では、主にアルミ製の薄い板(PS版)が使われます。 |
| 版(はん) | インキを紙に転写するための仕組み全般、または刷版の略称。 | 全般 | 「版を作る」「版代がかかる」など、最も広く使われる言葉です。 |
つまり、「版下(データ)」をもとに「製版(作業)」を行い、完成した「刷版(物体)」を使って印刷をする、という流れになります。
版とは?

一般的にパッケージ印刷にまつわる『版』は、刷版を指しますが、それ以外にも『版』は存在します。
『版』という言葉の意味を改めて調べてみると、以下のとおりでした。
① 印刷をする為に、文字や図形を彫った板。 例)平版、凸版、凹版
② 印刷物そのものを指す。 例)初版、限定版、豪華版
パッケージ製作の加工現場では、①の意味で使用する事が多いですが、「改版」等②の意味で使うことも時々あります。
以下の項目では、パッケージ印刷にまつわる「版」について詳しく説明していきます。
代表的な4つの印刷方式(凸版・平版・凹版・孔版)

印刷の「版」には、インキをどのように紙へ転写するかによって、大きく分けて4つの種類(印刷の4大方式)があります。化粧箱の印刷で主に使われるのは「平版(オフセット印刷)」ですが、それぞれの特徴を知っておくとパッケージ選びに役立ちます。
凸版(とっぱん)印刷は、版の出っ張った部分にインキをつけ、ハンコのように紙に押し付けて印刷します。文字の輪郭がくっきりとし、力強い印字が可能です。段ボール(外箱)の印刷(フレキソ印刷)などでよく使われます。
平版(へいはん)印刷は、版に凹凸はなく、水と油(インキ)が反発する性質を利用して、インキがつく部分とつかない部分を分けます。写真やグラデーションなど、細かく綺麗な表現が得意です。化粧箱の印刷で主流の「オフセット印刷」はこの平版印刷にあたります。
凹版(おうはん)印刷は、版のへこんだ部分にインキを詰め、紙に転写します。インキの層が厚く、色の濃淡を美しく表現できます。お菓子のフィルム包装やペットボトルのラベルなど(グラビア印刷)で使われます。
孔版(こうはん)印刷は、版に小さな穴を開け、そこからインキを押し出して印刷します。紙以外の素材(布、ガラス、プラスチックなど)や曲面にも印刷できます。シルクスクリーン印刷が代表的です。
製版とは?2つの製版方法を紹介

製版とは、パッケージデザインを紙に印刷するための版を作る作業のことです。
製版の方法は以下の2種類あります。
- 写真製版
- CTP
最近はCTPが主流になりましたが、稀に写真製版を行うこともあります。
それぞれ詳しく説明します。
写真製版
写真製版とは、フィルムを使って版を作る方法です。
パッケージデザインを透明フィルムに出力し、特殊な薬品が塗られたアルミ板に載せます。
アルミ板に紫外線を照射すると、光が当たった部分だけ硬化し、デザインが焼きつきます。
効果しなかった部分を洗い流すと版の完成です。
CTP
CTPとはアルミ板にデータを直接焼き付ける方法です。
プレートセッターという機械にアルミ板を通し、レーザーで焼き付けます。
写真製版より精度が高く、フィルムが要らない分コストも抑えられるため、今ではほとんどがこの手法で製版されています。
製版後に行う校正とは

校正とは製版したものに間違いがないか、不具合はないかをお客様にご確認頂くために提出するものです。
校正の方法には大きく分けて3つあります。
1.本紙色校正 ⇒ 本番とほぼ同じ状態
2.簡易校正(DDCP等) ⇒ 擬似確認(カラー、色分けの確認)
3.カンプ ⇒ 文字図柄確認
いずれかの状態でお客様の確認を取るのが望ましいですね。
化粧箱作成にかかる「版代」とは?いつ発生する?
オリジナルデザインの化粧箱を印刷会社に依頼する際、見積もりに「版代(刷版代)」という項目が含まれていることがあります。
版代とは、先ほど説明した「刷版(アルミ製の板)」を作成するための費用です。フルカラー印刷の場合はCMYKの4色分の版が必要になるため、最低でも4版分の費用がかかります。さらに、特色(金や銀、ブランド指定色など)を追加する場合は、その色数だけ版が増え、版代も追加されます。
版代が発生するタイミングは以下の通りです。
| タイミング | 版代の発生 | 理由 |
|---|---|---|
| 初回注文時 | 発生する | 新規にデザインデータから版を作成するため、必ず発生します。 |
| デザイン変更時 | 発生する | 文字の修正や色の変更など、デザインの一部でも変わる場合は新しい版を作り直す必要があります。 |
| リピート注文時(変更なし) | 基本的に発生しない | 前回と同じデザインで追加注文する場合、保管してある版を再利用できます(※保管期間には各社規定があります)。 |
版代は「初期費用」としての性質が強いため、一度作ってしまえばリピート時の単価を抑えることができます。
刷版とは?

刷版とはオフセット印刷(平版印刷)で印刷に使用する版のことです。
この刷版がオフセット印刷の特徴である水と油が反発する性質を利用した印刷方法を成立させている原点であるとも言えます。
オフセット印刷とは
オフセット印刷は水と油の関係を利用した印刷方法で、水の乗っているところはインクが乗らなようになっています。
オフセット印刷機の版(刷版)は平版で、版自体が凸凹とはなっていません。
さらにインクの乗っている部分をブランケットと呼ばれるゴム胴に転写し、原紙に印刷します。
刷版は1色に付き1版が必要となりますので、シアン(青色)・マゼンダ(赤色)・イエロー(黄色)・ブラック(黒色)の4色の場合版は4枚必要となります。
刷版印刷の前に必要な2つの作業
さて、この刷版作業のためには、もちろん印刷を行う図柄のデータが必要になります。それはお客様から提供していただいたり、おおよそのイメージを打ち合わせさせて頂き、こちらで編集作業を行う等によって作成しそれをもとに校正を行いお客様に了承を得てから刷版作業に入るのですが、この作業に入る前に忘れずに行わなければならない作業があります。
- 印刷図柄よりも少し多めに枠取りでデータを作製すること
- ノリシロにあたる部分の印刷データを消しておくこと
以上の2点について詳しく説明します。
印刷図柄よりも少し多めに枠取りでデータを作製すること
印刷図柄よりも多めに、つまりはみ出すような形で印刷できるように刷版作業を行うのは印刷の次工程、トムソンの加工においての微妙な見当ズレなどの対策として行います。トムソン加工時に1mmほどはズレる可能性がありますのでそのときに印刷の柄を化粧箱の寸法きっちりに作製しておりますと印刷されていない部分が化粧箱に出てしまうので枠よりも大きめに塗り足しておくことで、そういったことの予防になります。
ノリシロにあたる部分の印刷データを消しておくこと
また、ノリシロにあたる部分のデータを消しておくことは、ノリシロにインキが乗っていると糊貼りが出来にくくなりますので、もしお客様からいただいたデータなどにノリソロにも図柄がはいっておれば、忘れずにその部分を抜いておく必要があります。
これは、つい先日の私の体験として、窓貼りを行うときに裏面にも印刷を行うもので、その窓貼り用の糊しろを窓の枠から15mmほど開ける必要があることをすっかり見落としておりまして、デザイン決定後に本加工に入る寸前で気づき、急ぎお客様に許可を頂き抜いた。というあわや加工不能になる一歩手前の失敗をしまして、おおいに反省するとともに勉強させていただいたなあと思った次第でした。
版代(初期費用)の考え方とコストダウンのコツ
パッケージ製作において、初回のみ発生する「版代」はコストを左右する重要な要素です。具体的な金額はサイズや色数によって異なりますが、以下のポイントを押さえておくことで、トータルコストを抑える工夫が可能です。
- 色数を絞る: 刷版は1色につき1版必要です。4色フルカラー(CMYK)よりも、特色1色や2色に絞ることで版代を抑えられます。
- 共通版を活用する: シリーズ商品などで、ベースのデザイン(版)を共通化し、一部の文字や色だけを変更(改版)することで、新規に全版を作り直すよりコストダウンに繋がります。
- リピート生産を見据える: 一度作成した版は、一定期間保管され再利用が可能です(※保管期間は印刷会社により異なります)。リピート発注時は版代がかからないため、長期的な視点でロット数を検討することが大切です。
平版・凸版・凹版とは

平版とは
平版とはオフセット印刷で使用している版です。
水と油が混ざらないという性質を活かして印刷しています。
価格は一般的には均一価格で、丁付数により加工賃がUPする程度となっています。
凸版とは
凸部にインキが乗っているのが凸版です。
ハンコや版画などで馴染みがあるため、印刷といえば凸版印刷を思い浮かべる方も多いでしょう。
シール印刷や段ボールのフレキソ印刷が凸版印刷の代表となります。
凸版は面積の大きさによって価格がマチマチです。シール印刷等の樹脂製の版なら平版よりも安いですが、面積が大きいと平版よりも高くなってしまいます。
凹版とは
凹版は凹の部分にインクを貯めて転写する方法です。
濃く表現したい所は、凹部分を深くする事によってインク濃度を上げる印刷表現ができます。
綺麗な諧調表現が求められる、写真集や、加工紙表面に色付けする場合によく使われます。
そのためグラビア印刷という呼び名の方が一般化されています。
それぞれに特徴はあるのですが、版の作成コストとしては平版<凸版<凹版となり、凹版は版に耐久性があり長く使用できる反面、制作コストが高く、数の少ない印刷物には不向きです。
上記の様に印刷方法の違いにより、版の種類も変わり価格も変わります。
一般的な化粧箱の印刷にはオフセット印刷が最適なので、当社ではオフセット印刷を導入しています。
印刷方法については、以下の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。
平版・凸版・凹版の比較まとめ
| 版の種類 | 特徴(インクの付き方) | 主な用途 | 版の作成コスト目安 |
|---|---|---|---|
| 平版 (オフセット印刷) |
水と油の反発を利用し、平らな版にインクを乗せる | 一般的な化粧箱、パッケージ、チラシ、ポスター | 低〜中 |
| 凸版 (フレキソ印刷など) |
版の出っ張った(凸)部分にインクを乗せる | 段ボール、シール、ラベル | 中(面積による) |
| 凹版 (グラビア印刷など) |
版のくぼんだ(凹)部分にインクを溜める | 写真集、軟包装(フィルム)、大量生産品 | 高 |
パッケージ製作において、コストと品質のバランスが最も優れているのは平版(オフセット印刷)です。ケイパックでも、お客様の化粧箱製作には主にオフセット印刷をご提案しております。
表面加工に使う版とは?

版を使った表面加工も結構あるんですよ。
例えば、プレスコートしていてもロットのナンバリング印字はしなければいけない場合は、表面加工したくない箇所だけ樹脂版を使って外したりします。また印刷手法としてマットとグロスの対比を表現する場合では、表面加工である水性コートを用いる場合でもやはり版が必要となってきます。
また、箔押しの加工にも版が必要となりますが、箔版は材質が多いので、材料選びからプロにお任せください。
また、エンボス加工では、原紙面にエンドレス柄が刻まれた圧胴を押し当てて柄を転写させます。
この版(ロール状の圧胴)は表面加工業者の持っている、梨地やストライプ、絹目等の柄から選ぶことが多いです。
エンボス加工用の版は桁違いの値段ですが、お客様の希望に添えるように、他にもさまざまエンボス柄に対応しております。
印刷版に関するよくある質問【初心者向け】
印刷でいう「版」とは何ですか?
印刷における「版」とは、インクを紙に転写するための元になるものです。
簡単に言うと、大きなハンコのような役割を持つ道具で、デザインデータをもとに作成されます。
印刷の版にはどんな種類がありますか?
代表的な印刷版には平版・凸版・凹版の3種類があります。
一般的な化粧箱やパッケージ印刷では、コストと品質のバランスが良い平版(オフセット印刷)が多く使われています。
平版・凸版・凹版の違いがよく分かりません
違いはインクが付く位置です。
平版は水と油の反発を利用し、凸版は盛り上がった部分に、凹版はくぼみにインクを溜めて印刷します。
箱印刷では平版が主流です。
印刷の「版代」とは何ですか?
版代とは、印刷用の版を作るための初期費用です。
色数が増えるほど版の枚数も増え、その分版代がかかります。
同じデザインなら版代は毎回かかりますか?
基本的に、同じ版を使い回せる場合は再度かかりません。
ただし、デザイン修正や改版がある場合は、新たに版を作り直す必要があります。
少部数でも版が必要な印刷はありますか?
はい、あります。
オフセット印刷などの有版印刷では、部数が少なくても版の作成が必要です。
小ロットの場合は、無版印刷(デジタル印刷)が選ばれることもあります。
デジタル印刷(オンデマンド印刷)とは何ですか?版は必要ですか?
デジタル印刷は、家庭用のレーザープリンターのように、データから直接紙に印刷する方式です。版(刷版)を必要としない(無版印刷)ため、版代がかかりません。極小ロット(数十個〜)の作成や、一つひとつデザインが違うバリアブル印刷に向いていますが、大ロットになるとオフセット印刷(有版)の方が1箱あたりの単価は安くなります。
版の保管期間はどのくらいですか?
印刷会社によって異なりますが、一般的には最終注文日から1年〜3年程度保管されることが多いです。保管期間を過ぎてから再注文する場合、版が破棄されていて再度「版代」が発生する可能性があるため、定期的にリピート注文する商品は事前に確認しておくことをおすすめします。
CTP(Computer to Plate)とは何ですか?
CTPとは、パソコン上のデザインデータから、フィルムを介さずに直接「刷版(アルミ板)」を出力する技術のことです。昔は一度フィルムに出力してから版に焼き付けていましたが、CTPの普及により、作業時間の短縮、コスト削減、そしてより高精細な印刷が可能になりました。現在の化粧箱印刷の製版工程ではCTPが主流です。
特色(スポットカラー)を使うと版代が高くなるのはなぜですか?
フルカラー印刷はCMYKの4色の版で全ての色を表現しますが、金・銀・蛍光色や、企業のロゴマークなど厳密な色合わせが必要な場合は、あらかじめ調合された専用のインキ(特色)を使用します。この特色を印刷するためには、CMYKの4版とは別に「特色専用の版」を1つ追加で作る必要があるため、その分の版代が追加でかかります。
版とは使用する場面によって何を指すか変わってくるもの
『版』と言っても、その言葉は、場面場面で色々は『版』を指し、上記を理解していないと話が食い違うこともあります。
また、パッケージを作成するにあたり、多くの工程で『版』が必要であり、どの『版』も非常に重要なものです。たとえ1つでも・1ヶ所でも異なれば完成品は出来ません。
わからないことがあれば、我々箱のプロに頼ってください。
疑問点を解消しつつ、理想のパッケージを製作できるよう精一杯尽力します。
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