『版』とは?

「『版』という言葉には複数の意味がある?」
「箱の製作時に『版』という言葉が出てきすぎて混乱している」
「平版・凸版・凹版の違いを知りたい」

このように悩んでいる方も多いでしょう。

印刷において、様々な版がでてくるため、ひと言で説明するのが難しい言葉です。

当記事では、辞書的な『版』の意味から製版・刷版・平版・凸版・凹版といった印刷関連の言葉を詳しく解説しています。
パッケージ製作の打ち合わせの前に、ぜひご一読ください。

版とは?

パッケージ(紙製)制作の『版』の種類?

一般的にパッケージ印刷にまつわる『版』は、刷版を指しますが、それ以外にも『版』は存在します。
『版』という言葉の意味を改めて調べてみると、以下のとおりでした。
①  印刷をする為に、文字や図形を彫った板。 例)平版、凸版、凹版
② 印刷物そのものを指す。 例)初版、限定版、豪華版
パッケージ製作の加工現場では、①の意味で使用する事が多いですが、「改版」等②の意味で使うことも時々あります。

以下の項目では、パッケージ印刷にまつわる「版」について詳しく説明していきます。

製版とは?2つの製版方法を紹介

製版(パッケージ制作のデータ(ソフト)上での版)

製版とは、パッケージデザインを紙に印刷するための版を作る作業のことです。
製版の方法は以下の2種類あります。

  • 写真製版
  • CTP

最近はCTPが主流になりましたが、稀に写真製版を行うこともあります。
それぞれ詳しく説明します。

写真製版

写真製版とは、フィルムを使って版を作る方法です。
パッケージデザインを透明フィルムに出力し、特殊な薬品が塗られたアルミ板に載せます。
アルミ板に紫外線を照射すると、光が当たった部分だけ硬化し、デザインが焼きつきます。
効果しなかった部分を洗い流すと版の完成です。

CTP

CTPとはアルミ板にデータを直接焼き付ける方法です。
プレートセッターという機械にアルミ板を通し、レーザーで焼き付けます。
写真製版より精度が高く、フィルムが要らない分コストも抑えられるため、今ではほとんどがこの手法で製版されています。

製版後に行う校正とは

校正(パッケージ製作の出力ベースの確認用の版(?))

校正とは製版したものに間違いがないか、不具合はないかをお客様にご確認頂くために提出するものです。
校正の方法には大きく分けて3つあります。
1.本紙色校正 ⇒ 本番とほぼ同じ状態
2.簡易校正(DDCP等) ⇒ 擬似確認(カラー、色分けの確認)
3.カンプ ⇒ 文字図柄確認

いずれかの状態でお客様の確認を取るのが望ましいですね。

刷版とは?

刷版(パッケージ印刷の原版)・・・裏面にもご注意を(笑)

刷版とはオフセット印刷(平版印刷)で印刷に使用する版のことです。
この刷版がオフセット印刷の特徴である水と油が反発する性質を利用した印刷方法を成立させている原点であるとも言えます。

オフセット印刷とは

オフセット印刷は水と油の関係を利用した印刷方法で、水の乗っているところはインクが乗らなようになっています。

オフセット印刷機の版(刷版)は平版で、版自体が凸凹とはなっていません。

さらにインクの乗っている部分をブランケットと呼ばれるゴム胴に転写し、原紙に印刷します。
刷版は1色に付き1版が必要となりますので、シアン(青色)・マゼンダ(赤色)・イエロー(黄色)・ブラック(黒色)の4色の場合版は4枚必要となります。

刷版印刷の前に必要な2つの作業

さて、この刷版作業のためには、もちろん印刷を行う図柄のデータが必要になります。それはお客様から提供していただいたり、おおよそのイメージを打ち合わせさせて頂き、こちらで編集作業を行う等によって作成しそれをもとに校正を行いお客様に了承を得てから刷版作業に入るのですが、この作業に入る前に忘れずに行わなければならない作業があります。

  • 印刷図柄よりも少し多めに枠取りでデータを作製すること
  • ノリシロにあたる部分の印刷データを消しておくこと

以上の2点について詳しく説明します。

印刷図柄よりも少し多めに枠取りでデータを作製すること

印刷図柄よりも多めに、つまりはみ出すような形で印刷できるように刷版作業を行うのは印刷の次工程、トムソンの加工においての微妙な見当ズレなどの対策として行います。トムソン加工時に1mmほどはズレる可能性がありますのでそのときに印刷の柄を化粧箱の寸法きっちりに作製しておりますと印刷されていない部分が化粧箱に出てしまうので枠よりも大きめに塗り足しておくことで、そういったことの予防になります。

ノリシロにあたる部分の印刷データを消しておくこと

また、ノリシロにあたる部分のデータを消しておくことは、ノリシロにインキが乗っていると糊貼りが出来にくくなりますので、もしお客様からいただいたデータなどにノリソロにも図柄がはいっておれば、忘れずにその部分を抜いておく必要があります。

これは、つい先日の私の体験として、窓貼りを行うときに裏面にも印刷を行うもので、その窓貼り用の糊しろを窓の枠から15mmほど開ける必要があることをすっかり見落としておりまして、デザイン決定後に本加工に入る寸前で気づき、急ぎお客様に許可を頂き抜いた。というあわや加工不能になる一歩手前の失敗をしまして、おおいに反省するとともに勉強させていただいたなあと思った次第でした。

平版・凸版・凹版とは

平版・凸版・凹版・・・パッケージ印刷でマークすべきは!

平版とは

平版とはオフセット印刷で使用している版です。
水と油が混ざらないという性質を活かして印刷しています。
価格は一般的には均一価格で、丁付数により加工賃がUPする程度となっています。

凸版とは

凸部にインキが乗っているのが凸版です。
ハンコや版画などで馴染みがあるため、印刷といえば凸版印刷を思い浮かべる方も多いでしょう。

シール印刷や段ボールのフレキソ印刷が凸版印刷の代表となります。
凸版は面積の大きさによって価格がマチマチです。シール印刷等の樹脂製の版なら平版よりも安いですが、面積が大きいと平版よりも高くなってしまいます。

凹版とは

凹版は凹の部分にインクを貯めて転写する方法です。
濃く表現したい所は、凹部分を深くする事によってインク濃度を上げる印刷表現ができます。

綺麗な諧調表現が求められる、写真集や、加工紙表面に色付けする場合によく使われます。

そのためグラビア印刷という呼び名の方が一般化されています。

それぞれに特徴はあるのですが、版の作成コストとしては平版<凸版<凹版となり、凹版は版に耐久性があり長く使用できる反面、制作コストが高く、数の少ない印刷物には不向きです。

上記の様に印刷方法の違いにより、版の種類も変わり価格も変わります。
一般的な化粧箱の印刷にはオフセット印刷が最適なので、当社ではオフセット印刷を導入しています。

印刷方法については、以下の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。

パッケージの印刷方法を詳しく知る

表面加工に使う版とは?

パッケージの透明な表面加工にも版はあります

版を使った表面加工も結構あるんですよ。

例えば、プレスコートしていてもロットのナンバリング印字はしなければいけない場合は、表面加工したくない箇所だけ樹脂版を使って外したりします。また印刷手法としてマットとグロスの対比を表現する場合では、表面加工である水性コートを用いる場合でもやはり版が必要となってきます。

また、箔押しの加工にも版が必要となりますが、箔版は材質が多いので、材料選びからプロにお任せください。
また、エンボス加工では、原紙面にエンドレス柄が刻まれた圧胴を押し当てて柄を転写させます。

この版(ロール状の圧胴)は表面加工業者の持っている、梨地やストライプ、絹目等の柄から選ぶことが多いです。

エンボス加工用の版は桁違いの値段ですが、お客様の希望に添えるように、他にもさまざまエンボス柄に対応しております。

版とは使用する場面によって何を指すか変わってくるもの

『版』と言っても、その言葉は、場面場面で色々は『版』を指し、上記を理解していないと話が食い違うこともあります。
また、パッケージを作成するにあたり、多くの工程で『版』が必要であり、どの『版』も非常に重要なものです。たとえ1つでも・1ヶ所でも異なれば完成品は出来ません。

わからないことがあれば、我々箱のプロに頼ってください。
疑問点を解消しつつ、理想のパッケージを製作できるよう精一杯尽力します。
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