ある得意先様との商談の中で肉まん用の箱のお見積り依頼をいただきました。

詳しく伺うと、その得意先様が営業をかけている中華屋さんがあり、そこがこのたび新たに肉まんの店頭販売を計画しておられるようでその為の見積もりであるとのこと。
完全に新しく始めるということもあり、まず原紙を何にするかという部分からの打ち合わせになりました。

紙箱の素材について知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
紙箱の素材について詳しく知る

箱詰めする商品が出来立ての熱々な肉まんであること、つまり湯気や油分がでる商品であるということなので一般的な板紙のカードBなどではすぐに湿気や油でベコベコした箱になってしまうことが想定できますので、であればどんな原紙や加工を施すべきでしょうか?

1つは、用紙自体が耐水・耐油のものを使用すること
もうs1つは、加工にてPPラミなどを施すこと
ですね。

ということで今回は紙箱の用紙やその規格について紹介していきたいと思います。

紙箱の用紙の特性~種類により高い安いの差など様々あります~

まずは紙箱製造にとって最も重要な“用紙(原紙)の特性”です

用紙(原紙)の種類はどれ位あるのか?と聞かれたら・・・いっぱい・・・としか答えられないのですが(笑)一番ポピュラーなのが“コートされた紙”となります。

パルプを抄いて原紙ベースを作り、その上にクレー(粘度)等のコートを施した原紙で、その呼び名も様々で、厚紙なら白板紙、薄紙ならコート紙等が一般的なのですが、あまりにも大雑把な括りとなるので、原紙ベースの原材料の違いを呼び名とする事が多いです。

例えば古紙比率の高いボール原紙はコートボール、それの両面コートをカードB、古紙率の低いものがカードA、バージンパルプのみの物がコートアイボリー・・・。

更に原紙を抄いたままでコート層を持たない原紙は、ノーコート紙と呼ばれケント紙やコピー用紙がそれにあたります。

続いて、コート紙の上に更にアルミホイルや蒸着PETを貼りあわせた加工紙というものもあります。
下の項目でこちらはもう少し詳しくご紹介します。
はたまた、耐油、耐水性を持たせた機能紙まで入れると、その種類は相当なものとなります。

これだけ多くの種類のある原紙の中から特性を活かした原紙を選出するのは結構大変で、特に紙箱の包材に拘りを持つ商品群の場合、それぞれのコンセプトに合わした原紙を提案しなければなりません。

自然派の化粧品や食品では、加工紙の様に煌びやかである方が違和感が出るため、ノーコートの地合いを活かし、尚且つ優しい色使いでナチュラル感を演出してみたり。
逆にPOPや同類他社製品との差を出したい場合は、ピカピカツルツルの加工紙を使いアイキャッチ性を高める用紙を使用する事が重要になってきたりもします。

価格も特性に入るのかもしれません。大量生産する商品群等は、包材に高い費用を掛ける訳にはいかない事も多く、同じコートボールやカードBでもメーカーや微妙なサイズの違いで、価格に差が出て安い仕入れが出来る事もありコレも特性の一つと言えるかもしれません。

紙箱の用紙の特性~印刷方法にも差がでます~

次のお題は“用紙(原紙)の違い”です。
原紙の違いについては上でも少し触れたこともあるんですが、それは同じ白板紙で古紙の含有率やバージンパルプの使用比率でクラスが分かれ、裏がネズミ入りのコートボール、古紙比率の高い両面コートのカードB、バージンパルプの比率が高くなるカードA、古紙が入っていないコートアイボリー、表面を鏡面仕上げしてあるキャストコート、と大きく分けるとこんな感じになり、古紙率が高い紙程、白色度が落ちパルプの繊維が細く短い為、サクい(罫線で折り曲げると腰が無く、サクッと折れる感じ)紙になると・・・ここではその品質クラスではなく、コートボールという括り、カードBという括りでメーカーによって、その品質に差があるというお話です。

先ず、印刷時に差が出るのがインクの乗りです。

同じように刷っていてもメーカーの違いで差がある様です。
発色が綺麗か否かは主観的になるのでそれは置いといて、インクの乾く速度に違いがあるようです。
これは原紙表面のコート層の違いがそうさせる様で、若干ですがコート層の厚さや、成分比率、コート層の乾燥時間等でインクの乾燥速度に違いが出る様です。

これはベタ比率の多い印刷物ではブロッキング(表のインクが上の紙の裏について引っ付く)を招く要因になったり、次工程への移動に時間が掛かったりと印刷方法にも差が生じます。

また、原紙に使う原料や抄き方、コート層の定着加減で、紙粉(原紙に刃を入れるときの粉状のカス)が多くでる原紙もあれば、少ない原紙もあります。もちろんお客様の指定を無視して勝手に原紙を変える事はないのですが、指定がコートボール、やカードBといった品種クラスの指定であれば当社実績の良かった原紙を選定しています。

例えば当社ではコートボールクラスの原紙であるならば紙粉の関係やプレスコートなどの乗りの関係でOKボールという原紙を使用することが多いです。

更に微妙な違いがあり、表面加工で機能を持たせる場合の時・・・

たとえばブリスター台紙でのブリスターコート(糊引き)では、コート層に表面加工した液剤が程よく留まらなければ、その機能を発揮しづらくなります。
逆の言い方をすれば、コート層に表面コート剤の浸透が深く浸透しすぎると、機能しづらくなりクレームにつながる事になります。

同じグレードの原紙でもメーカーさんによって微妙な差があります。

それを知っておられるお客様は、望みの用紙を使用して紙箱を作るにあたり原紙選定の段階でリスクのある原紙は選定されないのですが、そうでないお客様は、私どもでもよくよく考えて、より良い品質で仕上がるように手配する必要があります。

紙箱の用紙の特性~加工紙について(リサイクルできません)~

上で少し触れました”加工紙”について、そもそも加工紙とはどんな紙を指すのか

というところから説明しますと、一般板紙とされるコートボール、カードB、コートアイボリー、キャストコートという原紙に対してグラビア印刷でパールを刷ったり、ホイルや蒸着PETを貼り合わしたり、
加工してある原紙なので大きな括りで”加工紙”といい、もう少し詳しく”パール紙” ”ホイル紙” ”蒸着紙”などと分類し、さらに細かく原紙の種類、加工色(金はシルバーに黄色を刷って表現)等を選定します。

パール紙であれば細かく綺羅びくパール感が高級感を出して、化粧品の箱などに採用されていたり、お祝い事の品物の箱として使われています。

このパール感もパールエッセンスの量でイメージが変わったり、原紙をノーコートベースのものにすると、表面の凹凸感がより強調され独特の雰囲気を醸し出すパッケージに仕上がります。また最近のパール紙の流行は白パールで昔からある少し黄色味を帯びたパール色ではなく、より白くより煌びやかに輝くパールが人気の様です。

ホイル紙、蒸着紙はその表面効果に色々な使われ方があり、鏡のような効果を利用すると印刷では表現出来ない光沢感、金属感が出ます。
また蒸着面に白色の印刷をして隠ぺいし光沢を無くす所と、光沢を出すところを使い分けると、箔押しと同じ効果を得られたり、グラデーションを掛けると箔押しでは表現出来ない立体感が生まれたりします。

さらにPOPなど訴求効果を求められる印刷物によく使われるのが、ホログラムフィルムを貼り合せたホロ紙で、これは光の加減でキラキラ光るプリズム効果が人の目をとめ、PR効果が非常に高いのですが・・値段も高い・・・(笑)

こんな加工紙をベースに印刷表現を工夫して、より高級感の高い箱作りも当社UV印刷で可能です。
勿論一般紙に比べて原紙価格は跳ね上がりますし加工紙はリサイクルに出せないなどの要素があります、費用対効果なりのパッケージは出来上がります。

ここ一番、フラッグシップとなる紙箱商品の用紙には加工紙をお使いになってみられたらということです。

紙箱の用紙としてのナチュラル感、人によってはクラフトなども?

いきなりですが・・・『ナチュラル (natural)』と は、Wikiによりますと、【本来は”自然の”や”天然の”など、人の手が入っていないありのままの状態を表す英語の形容詞である。】とのことです。

お問合せの中に、この『ナチュラル』と言う単語が増えてきた昨今ですが、この『ナチュラル』という単語が非常に厄介でして(笑)

というのは、イメージは各々の主観によるからです。
具体的に、どういうことかと言うと・・・・
①和紙っぽいものをナチュラルと言われる方
②クラフトのような段ボール地のものをナチュラルと言われる方
③白地のマットっぽいものをナチュラルと言われる方
人のイメージは種々様々だからです。
また、同じ人でも状況によって(取り扱う紙箱の商品によって)イメージが変わることもあるかと思います。

私共としては、その都度、より詳しくお客様のイメージを掴むべくヒアリングさせて頂き、マッチした素材・加工等々をオススメする訳です。
もちろん、イメージに合わせるためには特殊紙と言われる高い紙をオススメする場合もありますが、今回は特に③のようなイメージの方には、こんなことも出来ますよ!ということで・・・

分かりにくいかと思いますが、中面の底の方が白くて、全体がちょっと黄色っぽいのはお分かり頂けるかなと。
どういうことかと言いますと、通常使用するオモテ面ではなく、裏面をオモテとして使用しているということです。

片面コートアイボリーの裏面を使用することで、化粧品等々には、よく使用される原紙でもあり、(もちろん裏ねずのコートボール等々に比べれば高いですが)特殊紙に比べれば、かなり費用も抑えられますし、③のようなナチュラルさも出せます。

③のようなイメージでパッケージを作成されたい方は是非一度お試し下さい。
ちなみに、最初の画像【もみじや桜の柄のもの】も、この裏側に印刷したもの(=裏使い)です。  和風っぽいのにもよく合います。。。画像だけでは分かりにくいかとは思いますが(笑)

紙箱の見積もりにあたり用紙の規格の問題について

ここでは紙箱の見積もり作成時の話を少し紹介します。

見積内容としては印刷をレギュラー4色で、表面加工としてニスを引いた「蓋・身 式組立て箱」でして加工としては特に変わったものでは無かったのですが紙メーカーの持っている板紙の規格では非常にもったいない(商品部分以外が多くなってしまう)ものしか無かったので別寸にてお見積りを提出いたしました。

で、この別寸というものは何かと言いますと紙メーカーにこちらから指定した大きさの規格紙を作ってもらうというものになります。
当然ながら見積をしている正にその紙箱自体に一番適した無駄のない用紙の規格になりますのでこのギフト箱にかかる紙の費用が抑えられるということになります。

※以前も書いたかもですが、板紙の費用は「板紙の単価」×「板紙の重量」×「板紙の枚数」なので、この「板紙の重量」の部分が紙メーカーの持っている通常の規格紙よりも無駄なく、軽くなりますので板紙に掛かる費用が削減されるわけです。

ただしこの別寸、単価的には魅力的なものがあるのですが2点ほど気を付けることがあり何にでも適用できるというわけではありません。

気を付けること①

別寸を作製するにはある一定基準を満たす必要がある。
これは各紙メーカーさんやその紙の種類によっても変わってくる話ですが総重量2トンからであったり、10000枚からであったりと、そういった基準を満たしておれば作成できますが、あまり製造数量の少ないものは、よほど定期的にリピートがかかり短い期間で消費しきれるもので無ければ作成できません。

気を付けること②

納期の問題です。
通常の規格寸法や紙メーカーさんが持っている規格寸法と違い板紙の製造からかかるために板紙を用意できるまでに3週間~1か月近くかかります。
商品として長くリピートがかかるものであれば在庫が切れる時期を見越して前もって発注を掛けられますが初回製造時にはどうしても製造分だけ納期が遅れますので余裕を持った商品でなければ難しいということになります。