パッケージ用の木型 保管と期間の表示

前回の【パッケージ製作 用紙を抜くための木型について】の続きになりますが、『木型』について、もう少しお話させて頂きます。まだ前回分をご覧になられていない場合は、まずはこちらをご覧下さい。

パッケージを作成する際に使用する『木型』というものは1回で使い切りというものではなく、保管しておくことでリピート(増産)時には同じ木型を利用して製造することが出来ます。同じ品を製造するたびに新たに木型の作成をするということはありません。前述通り、弊社においては「木型」はお客様からの大切なお預かりものと認識しておりますし、お預かりしてご注文いただくたび何度でも保管木型をお使いいただけます。とは言え、1度利用した木型をそのままでいつまでも半永久的に預かっておくことは管理面において問題が生ずることは言うまでもありません。

弊社では「木型保管料」などはいただいてはおりません。が、木型を傷めたり失わないようにするために丁寧に保管しておく必要がありますし、これだけの数ですからどこに保管してあるかなどの管理コストも掛かります。

他にもたとえば、木型は使用頻度によっては消耗していく部分もありますので、時には消耗に応じて『刃替え』と言って罫や刃を入れ替える作業を行う必要があります。おおよそ10万ショット(トムソン加工で用紙を10万枚「抜く」ことです)が目安でしょうか?

そのように長い間使用している木型は何度となく切刃の交換をして木が朽ちるまで使い続けることになるのですが、工場にはこの『木型』がいろいろなお客様ごと、様々な商品ごとに沢山あるという状態になります。この状態に時間を加味して考えたときにどうなるかと言いますと、長い年月ため続けますとその量がとんでもないことなってしまうのです。

では、木型がとんでもない量になってしまうので工場で保管するのではなく、各お客様に保管していただいているのかと言うと、そのようなことはありません。もちろん、お客様がご自身での木型の保管を望まれる場合にはその限りではないのですが、望まれる理由も特にないわけですね。

パッケージを製作するにあたって木型が必要である以上、加工現場近くに木型を保管することが効率的であることは言うまでもありません。だからこそ、たとえお客様から支給いただいた木型であったとしても、基本的にはお客様の意向に背かない限り弊社で木型を預かることとしております。毎回毎回お客様に木型をお持ち頂くことは非効率に過ぎますし、とても現実的とは申せませんので。

では一体どうしているのでしょうか? 木が朽ちるまで様々な木型を全て延々溜め続けておければそれが一番良いのかもしれませんが、実際には保管場所の問題もあれば、先に申しあげた保管・管理のコストの問題もあり非常に難しいと言わざるを得ません。

そのため、弊社では年に1回、『木型整理日』というものを設けております。

実はつい先日もその『木型整理日』だったのですが、これがまた大変で、あらためてお預かりしている木型の数を数えてみますと・・・

なんと、3,500型以上!

仮に1型30,000円の木型代が掛かっていると考えたとしても・・・、総額で1億円を超えるほどの木型をお預かりしているということになります。考えるだに恐ろしい話だな、と思いました・・・。

さて『木型整理日』ですので不要となった木型の整理などもするわけですが、時にはトラック1台満載になるくらいの不要木型が出て参ります(それでも保管木型のほんの極々一部なのです)。

不要木型って何?と思われた方もいらっしゃるでしょうか。

新しい形状の箱を作成するときには必ず木型を作成し、特にお客様のご要望がなければそのまま保管することとなる点は先にも申し上げましたが、1回の製造で終わってしまう商品もあれば、毎月定期的に製造される商品もあります。その各々に木型は存在するわけなのですが1台の木型を製造するコストというものはそれなり掛かるものありますので、例えば2~3年使用していなくても、お客様は中々廃棄するることに了承をしてくれません。

もしかしたら、リピートがくるかもしれない、デザイン違いの同寸箱を製造するかもしれない・・・等の理由で中々”廃棄OK”とは言っては貰えないわけです。こうなると木型は年々増える一方となり、当社の木型室も現在でも溢れんばかりの木型が並んでおりますが、まさしく溢れていく事になってしまいますね。

もちろん、製造側も木型を保有している事によってその商材の既得権が発生するとも言えるため木型を持っている事には意味はあるのですが・・・、それはもう凄い量になるわけで(笑) 私のお客様でも、2~3年に1回製造する商品はざらにありますし、とある老舗のお客様は10年に1度の製造もあるくらいです。だからといって使用しない木型を保管し続けるのは難しい・・・といわけです。

そこで、弊社では初回に頂く木型代とは別に特に保管料などはいただかないかわりに、木型保有期間というものを設定しており、お見積もりの際には御見積書に”2年間未使用の場合は、こちらの方で処分さして頂きます”等の文章を入れさせていただいたりもしております。最終使用日から丸2年間使用しなかった木型については、今後使用する見込みがないものと判断し原則として処分することとさせていただいているわけです。

中には、仕事を出しているのだから木型は持っていて当然だ、という考え方のお客様もおられるようですが、保管料をいただいているわけではありませんのでそれは通らない話だと考えます。ビジネスはお互いが成長してこその取引ですし、この観点から言うと先のようなことは決してWIN-WINな関係ではないですよね。
恐らくはこのようにおっしゃるお客様も理解されていることとは思いますが。

とは言え、では2年経ったから即廃棄処分!ということにしているかと言うと、そのようなこともありません。そこのところは既存のお客様にはよくご理解いただいている所でありますが、たとえ2年が過ぎていようとも木型の整理をする折には、可能な限りお客様に木型の有無のご判断を仰ぐようにしております。そうして2年以上が経っている旨一応のお断りを入れさせていただいたうえで、処分かお引取をお伺いすることにしています。

しかしながら商品によっては、お客様の方でも想定外なほど長らく動かなかったけれども忘れたころに再販が・・・などということもあるわけで。かような場合には、木型の保管についてまた別の問題が浮上したりもするするわけですが・・・。だからこそ、お互いが納得できる範囲で協力していく姿勢が必要であるのだと思います。それこそがビジネスパートナーだと思いますので。(お客様をビジネスパートナーと呼ぶにはおこがましいという意見もあるでしょうが。)

今後とも、木型の保管につきましてはお客様皆様にご協力いただけますよう、伏してお願い申し上げる次第です。

パッケージの既存木型・保管木型の有効利用を

パッケージの既存木型・保管木型の有効利用を

さてさて、少し話を変えまして。

既に作成して使用した木型ですが、せっかく費用も掛けて作成し弊社にて保管もされている木型について、できるだけ有効活用していきたいところですよね? これは皆様だけではなく私どもも同じように考えており、お互いに協力し合っていけたらと思います。

たとえば既存木型を利用した新規商品の制作についてですが、よくある既存木型の流用はまったくの同木型を使用したデザインの差し替えのみの流用などがありますが、この既存木型の利用法は皆様ご存知だと思います。

これとは違いギフト箱などでよくご相談のあることですが、外側(蓋・身)はそのまま利用したいが中に入れる商品が違ったり、入れる数量が違ったり、はたまた、複数の種類のものを入れたりと複数パターンの入れ方を共通で利用したいというものがあります。

もちろんまったくその新商品のために作られた寸法ではないので、入れづらさや作業の難さはあるのかもしれませんが充分許容される範囲のものであるならばわざわざ木型代を払うよりは・・・と、そのまま流用したり、中の仕切りのみ作り直すことで作業性とコストとの選択から、既存木型を使用されたりします。

いずれにせよ、現状の木型の作り方や印刷の仕様などによって、少し手を加えてでも既存木型を流用した方が良いのか?それとも新たに木型を作成した方が結果的にクオリティの高い商品、安価な商品を作ることができるのか?が異なりますので都度ご相談いただくというのがベストではあります。

もちろん、ご相談がなくともこちらで最適な加工方法が見付かったならば、いつでもご提案差し上げます。また、今後を見据えて少しでも汎用性を持たせた形状・サイズのパッケージをご提案をさせていただいたりもしております。

パッケージ製作 木型で入れるちょっとかっこいい?リサイクルマーク

パッケージ製作 木型で入れるちょっとかっこいい?リサイクルマーク

これは知ってらっしゃる方や見たことのある方も多いかと思いますが、トムソン加工時にできることの一つとして、たとえば上の画像の『紙マーク』などを入れたりする事が可能です。「刃」や「罫」とかと同じく、木型の板にマークの「押し型」を一緒に埋め込んでおくことで、加工後の用紙にはマークが刻印された状態となるわけですね。

通常、こうしたリサイクルマークの類はデザインデータの方に含まれることで印刷で表現されることが多いのですが、必ずしも印刷でなければいけないわけではありません。それこそ印刷なしの無地の箱にしたいのに、識別表示の義務があるにせよ、そのためだけに印刷するのではコストが増してしまいます。他にも箔押しのみの場合やデザイン上マークを目立たせたくない場合、なども考えられますね。とは言え、表示義務がありますので、マークを入れないわけにもいきません。

そのような際に、コストを抑えて、もしくはあまり目立たないようにしつつマークを入れることが出来るのがこの木型でのリサイクルマークとなります。用紙の素材や色によっては視認性があまり良くない場合もありますので注意は必要ですが、大抵の場合には十分視認出来る程度に刻印出来ますので、覚えておいていただけますとパッケージ製作の幅が広がるのではないでしょうか。

木型でのリサイクルマークをご希望の際には、その旨仰っていただければサイズや種類・入れられる場所などお打ち合わせさせていただきます。是非ともご活用ください。

パッケージ製作 トムソン抜きのウェーブ刃について

パッケージ製作 トムソン抜きのウェーブ刃について

最後に一つ、パッケージでも化粧箱ではなく、ダンボールパッケージでよく使われておりますウェーブ刃についてご紹介したいと思います。

ダンボールのパッケージで、端の辺が波状になっている箱を見たことってありますでしょうか?

通常は、真っ直ぐな直線や曲線になっているのですが、それを“なみなみ”にする事が出来るのです。方法は簡単なことで、トムソン打抜きの木型の刃をストレート刃からウェーブ刃へ変更することで、波型に作ることが出来ます。ダンボールや紙器の業界では当たりまえになっていることですが、目的としては”安全性”というものが第一に挙げられます。

思い出してみると皆様も、ダンボールや紙の端で手を切ったことありませんか?

そうです、ウェーブ刃にすると手が切れにくくなるんです。実際に触ってみていただくと一目瞭然でわかると思います。感覚的にはソフトな感じがします(まぁ感覚ですのでこれはあくまでも私の個人的な感想になりますが・・・)。

そしてまた、トムソン時の紙粉が減るとの話を聞くこともありますが、その事については明確な数字があるわけではなく、個人的には何とも言えないと思っています。たたし、髭(トムソン時、キレが悪くて細長い切れ端が出る事があります)については軽減されるようです。

さて、紙粉云々についてはさておき、紙器のパッケージでは、ウェーブ刃はあまりお目にかかることがありませんが、紙器でこのウェーブ刃を使ってパッケージの表現をしては如何でしょうか。ストレート刃での切れ端よりソフトなイメージを持たせることが出来ますので、例えば丸い紙団扇をウェーブ刃にしたり、動物のイラストのパッケージでやわらかい感じを持たせたり出来るのではないでしょうか。また、手が切れにくいという特性を生かして子供向けの商品のパッケージに使用したりしてはどうかなと思います。今後、商品化出来た際には、是非またご紹介させていただきたいと思います。

パッケージの木型 最後に・・・

パッケージの木型 最後に

ということで前回・今回と2回にわたって、箱を製作する時の木型とその周辺ついてお伝えさせていただきました。

お客様にとっては直接目に触れることのない(少ない)ものではありますが、箱を作成する上で なくてはならいものでもありますので、多少なりとも参考になりましたら幸いです。

さて、今回も皆様のお役に立てますよう幾つかの情報をお届けさせていただきましたが如何でしたでしょうか。もし、もっと詳しいことが知りたい・相談したいなどございましたら、是非ともケイパックへお声掛けください、精一杯ご協力させていただきます。

2回にわたって、かなりボリュームとなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。