パッケージを製造する際の・・・敵・壁・お化け?

まずはパッケージの製造における原紙の厚みの変更について少し紹介したいと思います。

原紙の厚みの変更で、より厚い方向への変更としてよくあることの一つとしては、企画の段階で箱の見積もりを取り、作製されたサンプルに実際に梱包する商品を入れてみたところ予想以上に頼りないとき等があります。

このときに箱自体の形状を、例えばキャラメル箱であったものを地獄底箱にするということも一つの方法ですが、強度をより上げるために紙の厚みを上げて商品の仕様に耐えうるものにしようということであります。

もちろん紙の厚みを上げることで強度もその分だけ上がりますのでよいことではあるのですが、問題点として厚みが上がるとその分だけ紙にかかる費用も上昇しますので見積としても厚みが薄かったときよりも単価が上がります。

そして、紙の厚みを下げることは、ほとんど上の例と逆のことで、商品に対して箱の強度が求められている以上のものである場合では紙の厚みを下げるという具合です。

そして厚みを下げると紙の費用が下がるのでその分単価も紙の費用が下がる分だけ下がります。

また、上記のように紙の厚みを下げるということは製造費用の合理化を図りたいお客様にこちらから提案させていただける事例の一つでもあります。

ちなみに紙の厚みを下げたときの副産物として紙の厚みが下がる=紙が軽くなる=商品が軽くなる。ですので、いままでは200梱包だった商品が250梱包になり発送運賃が下げられたり、梱包数が変わらなくても軽くなった分取扱いが楽になったりと、色々と良いことがあったりもします。

と化粧箱には、このような細かい話があるのですが、そんな細か~いことにご興味があれば是非下記本文をどうぞ。
細か~い話なので、分かりづらい部分もおおいと思いますが、
細か~い話ですが、非常に大事な部分でもありますので、よろしくどうぞお付き合い下さいませ。

パッケージ製造の際の『敵』

パッケージ製造の際の『敵』

パッケージ製造時には色々な敵が存在します。

はじめの敵は“湿気”です。正確にいうと乾燥もそうなので・・・、湿度という事になります。

この”湿度”というのは結構厄介で、色々な弊害を生みやすい環境となります。簡単な例を挙げていくと、まずは紙癖の悪さ。この紙癖は、紙目と関係し、パルプ同士を繋ぐ繊維の方向が一定に流れていることから、湿気を吸い込んだ原紙が乾燥する段になって、縦方向と横方向の繋ぎ合わせる力の強さが変わる・・・すると、紙がスルメイカの様にくるりんと巻いてしまう・・・印刷できない・・・抜き(トムソン)加工出来ない・・・なんてことになってしまう事もあります。

これは酷い例ですが、実はもっと厄介なのが微妙な吸保湿による原紙の伸縮です。

これは、1枚の原紙に多面付している場合に、見当が合わない・・・
印刷時には問題がなかっても、それを抜く時に見当が合わないという現象が出てきます。箱の各々の面に対して縁取りがしてある様なデザインでは、真ん中に位置している商品は均等な縁取りが出来ていても、端の商品は縁取りが右に寄ったり、左に寄ったりしてしまいます。

また湿度が高いと印刷乾燥に時間が掛かってしまったり、工程数(移動)が多いとその間に吸保湿を繰り返す回数が増え、同じ現象が起こったりしやすいので注意が必要です。

また、プレスコートの様に加工自体に高温となるセクションがある場合は、特に紙の伸縮が発生しやすくなります(ので、抜きズレを予防するため、プレスコート加工終了時点で採寸して、それから木型を作る場合もあります)。

最も気を付けなければならない原紙は、蒸着PETを貼り合わせてある加工紙でこれは乾燥すると静電気を起し重なり合ってしまったり(重送)、湿気を含むと乾燥時の水分の排出がPETフィルム面からはされず、パルプ面の片側から行われる為、カールしやすい状態になります。

勿論、印刷時は原紙を直前まで包装紙から出さないようにしたり、室内湿度を一定に保てるような設備を設けたり、加工後次工程に移るまでは外気になるだけ触れない様に保管したり、工程間にあまり長い時間をかけないようにしたりして未然に防止策をたてています。

ただ、目に見えない湿気ですから・・・

原紙の時からの保湿量も影響しますし・・・

ウーン、悩ましい目に見えぬ敵・・・”湿気”・・・・厄介です!!

パッケージ製造の際の『壁』

パッケージ製造の際の『壁』

化粧箱・パッケージを作成する際、限界と言いますか、『壁』と言いますか、制作上無理があるものがあります・・・

まずは寸法ですが、当社の工場内に限ったことを言えば印刷機を通る寸法が最大 715×1020㎜となります。当社の機械は一般的に呼ばれる菊全機で、菊全は菊判を指し、全は全判を意味します。

菊判というのは原紙を取り扱う人には分かるのですが、そうでない方は???という寸法です。菊全を寸法でいうと、636×939㎜で原紙の一つの基準です。もう少しややこしい話をすると、菊判という単位は洋紙(チラシやポスター、パンフレットに使うような紙)のもので、我々の取り扱う紙器関係の紙は一般的に板紙といわれそれよりも厚い物になり、板紙の場合はK判と呼ばれます。このK判は菊全と若干寸法が違い、K全の寸法は650×950㎜となるのです。

ちょっと話が横にそれましたが、その菊全が通る機械でも色々あり、当社の機械は寸伸びサイズとなり(菊全より少し寸法の大きいという意味)、ある意味重宝するのです。

それは、原紙によってはこの菊全ともう一つの基準、四六判788×1091㎜しかない事が多いのですが、消費量の多いコートボール等は、この基準寸法をもとに紙商さんが独自の寸法を在庫されておられ、その寸法が例えば、710×1000mmであれば通せる機械と通せない機械が出てくるのです。

これはすなわち取り数に行きつき、同じ個数を制作する場合は通し枚数が少ない方が、コストが安くつくことに繋がるのです・・・。そんなに多い機会で限界寸法に携わることもないのですが、少なくもなく、印刷の限度寸法というのは大事な設備要因ともなります。

MAX寸法は715×1020mmだと。であればMINIMUMは?となるのが人情です。その答えは400×550㎜が最少となり、先ほどお話さして頂いたL判800×1100㎜の1/4のサイズがミニマムとなります。

限界の話は大きさだけではありません。厚みも限界があります。

これは印刷機の限界が一番狭く、当社の印刷機では米坪157.9g/㎡の約0.15㎜から600g/㎡の約0.76㎜位までが限界となります。当社は紙器製造メーカーなので、印刷機もそれに合わした厚みの加工が出来るようなっており、チラシやカタログ等の薄い紙は印刷出来ないのです。また厚い方の限界も約0.76㎜位と記しましたが、どうしても止む無く・・・

という場合以外は避けたい厚みです。それは印刷加工する際に原紙を鉄爪で挟んで引っ張りながら色をつけていくのですが、限界近くまでの厚みを挟むと鉄爪が甘くなるというかゆるくなってしまい、次の印刷物への影響が出てしまう事もあるので、出来れば450g/㎡~550g/㎡の約0.58~0.69㎜位の厚みを限界としたいところなのです。

また限界という訳ではないのですが、最低印刷数はいくらですか?という質問をよく受けます。印刷通し枚数に限度はないのですが、多い方は数万枚から作業効率が上がらないので、印刷工賃は変わらなくなってしまいますし、逆に仕上がり数が100枚でよかっても、以前書いた最低工賃(台数計算)となってしまい。1000枚刷るのも、100枚するのも工賃は変わらず、限界ではなく割高になってしまいます。

パッケージ製造の際の『お化け』

パッケージ製造の際の『お化け』

ゴーストとは?

オフセット印刷における印刷図柄にて同じインキを使用する図柄の印刷の咥え方向からみた垂直なラインのその箇所毎のインキの消費量の差によって発生する色の濃淡の差のことであり、その濃淡の濃い方があたかも他のインキが表現している図柄が写りこむように表現される。本来いないものがいる。ぼんやりと図柄が表現されていることなどから「ゴースト」と呼ばれているようです。

少しややこしい書き方になりましたが要は「写っちゃいけないものが印刷された!」ということです。まさに心霊写真のような感じで、当然そんな状態ですので商品としては問題ありの怖い現象と言えます。

ではこのゴーストの発生原因と言いますと同じ色のインキの、咥え方向から見て垂直なラインがライン「A」では印刷するのにそのインキを消費する箇所が10箇所ありそれぞれ色の濃度としては1程度の濃度が目標とします。となるとインキの供給は10×1なので10がベストと言えます。対して隣のライン「B」では消費する箇所が5箇所で色の濃度は同じ1程度だとしますと、供給量は5が良い加減だと言えます。

しかしインキの供給量は「印刷デザインにて各パーツのインキの消費量が大きく異なる場合」にも書いております通り、そこまで細分化しての調整は難しいので5の消費で済むライン「B」にも10のインキを供給してしまいます。

仮に調整できてもローラーの動きなどで結局左右にインキは移動します。さて、そうなりますと供給が10に対して消費箇所が5箇所なのでそれぞれの濃度は2になってしまいます。当然色の濃さは1よりも2の方が濃いので同じ色を表現したいはずなのに濃淡の差ができてしまう。

そしてその現れ方がライン「B」と同じライン上にある他のインキで表現している図柄(エンドレス柄等に顕著です)のように現れる。

と、ゴーストの説明をさせて頂いたのですが・・・難しいですよね?
百聞は一見に如かずで、お問合せ頂ければ、現物をご覧頂けるのですが。

ゴーストの抑制方法

せっかくですので、その続きとしてゴーストに対しての抑制方法について紹介していきます。

まず、製版の時点での話としてはゴーストの発生が予想されるライン上に、他のラインのインキの消費量と同程度だけ消費できるように色帯をつける。という方法が有効です。ゴーストは他のラインに対して同じ色のインキの消費箇所が少ないラインに、消費箇所が少ないが故に各箇所へのインキの供給濃度に差がでることで発生するものですので、その消費箇所が少ないライン上に他の箇所と同じぐらいインキを消費できるほどの色帯を太くつければ、各箇所へのインキの供給濃度の差が小さくなりますのでゴーストが発生しても、目立ちづらくなります。

そのためゴーストが出そうな図柄だと判断できた時点で色帯を通常の色合わせの為に必要な細いものだけで無く各ラインのインキの消費量を平均化できるように細かく指示を出し、製版いただくが大事です。

しかし、図柄に対しての原紙の余白次第では上記のような色帯をつけることが難しいこともあります。もちろん初めから図柄がわかっていればそれがゴーストを発生させそうか否かを判断してそれを含めたうえでの原紙寸法の裁定を行えますが、見積段階ではまだデザインが決まっておらずに、箱の寸法だけで見積もりをすることもあるかと思われます。そのため、その時点ではゴーストへの対応は想定されておらず上記のような色帯が付けられないと。

ですので、ゴーストが発生しやすい図柄だと判明した時点でゴーストへの対処の為に原紙の大きさを変更する必要があるとお客様に伝えることが重要です。

もちろん原紙を大きくするということは単価にも影響を与えますので、簡単な話では無いのですがせっかくデザインされたものが綺麗に仕上がらないということを考えれば納得いただけるかと思います。

そしてこれらに加えて重要なことが一つ。図柄を見た時点でゴーストの危険性があることに気づく。ということです。気が付けなければ上記の手段も全て使用できません。

弊社では、そのためにも「気づきの感性」を重要なものだと考えて環境整備を通じてこの感性を養うことを重要なテーマとしております。

次のゴースト対策として・・・一生懸命に水を絞る事が、非常に重要です。

ゴーストってね、インキの被膜が薄い方が出にくいのです。ゴテっと厚盛にしたインキだと、ゴーストが出放題に成ってしまいますから、インキの盛りを少な目にして、なおかつ湿し水を、ギュギュっと絞ってやると、かなり軽減する事が可能です。

湿し水を絞れば、インキを薄盛りにしても、濃度を出す事が出来ますから、基本的にはこの方法を1番最初に試してみるとイイですね。

ギフト箱の製造において印刷のゴーストが発生・・・
しませんでした。

ギフト箱の製造において印刷のゴーストが発生…しませんでした。

インキの消費量の差によって生じるこの現象は特にエンドレス柄に顕著に現れるので、デザインの図柄とそれの印刷時の丁取りなどをよくよく観察し、考察し、ゴースト発生の危険性があるか否かを判断しなければなりません。

特に個人的に抜け落ちてしまいやすい部分というと、糊貼りのある形状の箱の糊しろ部分になります。

お客様からデザインデータを頂いた状態では糊貼り加工の為に糊しろにインキが乗らないようにデザインが作製されていないものが多いです。しかし実際に生産するにあたっては糊貼り加工を行うにあたり、糊しろにはインキが乗らないように編集します。

その結果入れ込み式に丁取りを行っていたりすれば糊しろ部分だけにインキが乗らず、その糊しろ部分と同じライン上にある図柄のインキ濃度が上がってゴーストが発生する。ということになります。

ついついデザインを確認した時点で大丈夫だと高を括ってしまいがちなのでこの部分は特に、注意しております。というかデザインで確認するだけでなく、実際に印刷する前に刷版のデータをしっかりと確認すれば良いだけなのですが。

そんなわけで気を配る必要のあるゴーストですが今回新版もので、ある蓋・身式のギフト箱を生産しました。そのデザインが如何にもゴーストを発生させそうなデザインでしたので私としてはインキの濃度を調整するために原紙を大きくしてその余白部分に大きく色帯をつけようと思っていたのです。

ただ原紙を大きくするとなると単価に関わりますので、お客様にその話をする前に印刷オペレーターの方にどのぐらい色帯をつけたものか相談にいきました。もしかしたら現状の原紙寸法のままで、それにつけられる程度の色帯で済むかなあと思っての相談でした。

しかし、オペレーターの方はデザインを見るなり軽~く一言で

「それ(デザインのことです)色が薄いからゴースト出たとしても全然目立たないよ」

そうです。ゴーストは色の濃度の差によって発生する現象ですので、元々の色が薄ければ当然目立ちにくいのです。

あまりにもあっさりと解決してしまい私の悩んだ時間は何だったのかという感じですが、実際何の問題も無く本印刷が行われました。

今回のように表面的な記号だけを覚えてわかったつもりになっていても現場の方にお話しを聞かせていただくと全然問題がなかったり、その逆もありえますので、当然のことですが一つ一つ丁寧に考えて行動せねば。と改めて思った次第です。